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2008年11月3日月曜日

「リスクは数学的に管理できる」という幻想




いま起きているパラダイム転換の基本的な要因は次の3つだという:

投資の主体が先進国から新興国に移り、世界的に大規模な資金過剰が生じている。
新興国や産油国が、資金をSWFなどによって自前で運用するようになった。
新しい金融商品は高度なリスク分散を可能にしたが、世界の金融市場の「大量破壊兵器」になった。


国際経済学の常識では、発展途上国の経常収支は赤字になるものだが、現在は新興国が大きな経常黒字になり、その所得が世界のGDPの40%以上を占める。この資金が国内市場で吸収できないため、欧米(特にアメリカ)に流入し、投資銀行やヘッジファンドなどで運用されている。アメリカ人は、この資金で新興国から商品を輸入している。いわばグローバルな規模でvendor financingが行なわれているのだ。日本の異常な低金利も、円キャリーによってバブルを促進した。しかしこの構図は、そう長くは続かない。新興国がこれまで欧米の投資銀行に運用を委託していた資金を、SWFや民間の投資ファンドを国内につくって運用するようになったからだ。中国の投資ファンドは、毎年倍々で成長を続け、最近では総資産は数兆ドルにのぼる。さらに新興国の需要による資源価格の高騰は産油国などへの富の移転をもたらし、安価な労働力によるデフレ圧力が、世界に広がるだろう。当初はリスク回避の道具としてできた派生証券が、積極的にtail riskを売ってもうける道具になった。しかしCDSのようなtail insuranceは、企業が債務不履行に陥るリスクを個別企業の財務内容から計算しているため、多くの企業がいっせいに債務不履行に陥ると、大地震のときの火災保険のように破綻してしまう。ファンドマネジャーが金融技術を過信し、「リスクは数学的に管理できる」という幻想をもったことが間違いのもとだった。価格変動の95%は金融技術で管理できるが、残りの5%がファンドの運命を決めるのだ。今回の危機の根本原因は、古い金融インフラが激増する富の移動を支えられなくなったことにある。いわば過去の市場が未来の市場と衝突し、その発展をさまたげているのだ。大転換のためには、今回のような全面的危機がある意味では必要だ。そういう事件がなければ、市場も政府も古い思考様式を変えようとしないからだ。1907年の金融危機によってFRBができ、1930年代の大恐慌によってSECができた。当面は政府や中央銀行が「最後の貸し手」として市場を支えるべきだが、長期的にはIMFの機能を強化し、グローバルな危機管理のための国際機関をつくる必要がある。
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