2009年3月21日土曜日
ミドル・パワー・インターナショナリスト」
「吉田・大平ドクトリン」 の狸戦略家・ 永井陽之助氏=東工大名誉教授
【訃報】 永井陽之助氏=東工大名誉教授(読売新聞/3月18日) 現実主義の立場から1960~80年代論壇で中心的役割を果たした国際政治学者で東工大名誉教授の永井陽之助(ながい・ようのすけ)氏が、昨年12月30日に亡くなっていたことが分かった。84歳だった。告別式は親族らで済ませた。 東京都生まれ。東大で政治学者の丸山真男氏に師事。米留学中、キューバ危機に衝撃を受け、政治社会学から国際政治学に転じる。65年、「中央公論」に「米国の戦争観と毛沢東の挑戦」を発表して論壇デビュー。同論文を含む67年の「平和の代償」は、米中ソが支配する世界権力構造と、限られた選択肢しか持たない日本外交を解明した著作として名高い。国際政治学者の高坂正堯氏と共に現実主義の立場から、吉田茂の軽武装・経済重視の戦後外交を高く評価した。78年刊行の「冷戦の起源」は冷戦研究として国際的にも評価が高い。80年代には非核・軽武装を唱え、軍事力を過大視するタカ派を批判した。 北大教授、東工大教授、青山学院大教授を歴任。「日本外交における拘束と選択」で67年に吉野作造賞。 中嶋嶺雄・国際教養大学長(国際社会学)の話「40年以上のお付き合いだったが、日本の国際政治学を世界的水準に引き上げた方なのに全く偉ぶらず、いつも快活な人だった。最近の国際政治について意見を聞きたいと常々思っていただけに、本当に残念だ」(2009年3月18日09時07分 読売新聞)
以上、2chの「永井陽之助」スレから引用した。付け加えれば、岡崎久彦氏は、ゴリゴリの親米派だが、それはアメリカの恐ろしさを知っているがゆえの「親米」である。 靖国神社の「ルーズヴェルト展示」を事実であるにもかかわらず、岡崎氏が難癖をつけてきたとき、私は、根本には、アメリカに対する極度の“おびえ”が背後にあると思った。 それは、日英同盟を失ってから、日本がアングロアメリカンに包囲され、殲滅されたと考えているからだろう。それが戦前派の岡崎氏のDNAに刷り込まれている。「アメリカに見捨てられたら、それは日本がアメリカに対して敵になることを意味する」という考え方である。吉田系の永井氏は、「安保ただ乗り」をしながら、タマネギの皮をむくように(by サミュエルズ)、対米協力を拡大する側の意見に与してきた。 岡崎氏と全く違うように見えるが、現状認識は同じ、対応が違う、ということだろうと思う。永井氏は、サミュエルズのいう、「ミドル・パワー・インターナショナリスト」の系譜に属し、アメリカが期待している「ノーマル・ネイション主義者」(実態は日本版ネオコン)の系譜とは違う。(サミュエルズの分類は下のマトリックス図参照 サミュエルズの"Securing Japan"から)
Securing Japan: Tokyo's Grand Strategy and the Future of East Asia (Cornell Studies in Security Affairs)
Richard J. Samuels / Cornell Univ Pr北岡伸一とか、坂本一哉とかは「ノーマル・パワー系」であり、永井陽之助、添谷芳秀らの「ミドルパワー」系とは違う系譜に属している。さらに、中西輝政、故・片岡鉄哉氏は、サミュエルズ分類では、「ネオ・オートノミスト(日本版ゴーリスト)であり、田母神俊雄氏や平沼赳夫氏、桜井よしこ氏もこの系譜に属する。この日本版ゴーリストは、「台湾ロビー」の影響を受けているのでやっかいだ。ノーマル・パワー系のようなアイデアリズムは共有しないが、対外強硬派であり、ジャクソニアンの系譜である。日本にはリバータリアン系のアイソレーショニストは存在しない。急進的左翼があるが、急進的ハト派右翼は存在しないのである。なお、岡崎久彦は、ミドル系とノーマル系の中間に位置するだろう。
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